嚥下障害が悪化し、ベッド上で食事をするときに注意する点は、食事時間が40分以上かかる時に、身体がずれない、疲れにくい姿勢を整えることです。
一般的には
ことが重要です。
調整に必要な物
1.枕、タオル、クッション
嚥下しやすい頭頸部を調整。
2.肘クッション
麻痺があれば肘当てを置き体が傾かないようにする。
3.膝下クッション
ベッドの膝折り曲げ頂点と膝の位置を合わす。
4.足元クッション
足の裏が接していると嚥下しやすいといわれています。
ベッドの背上げ屈曲点に骨盤の出っ張り部分がくる様に体の位置を調整。
この位置が足のほうにずれていると、食事中に体がずれていくのと、お腹が圧迫されて食べ物が胃へ入りにくくなります。
ベッドの膝折り曲げ頂点と膝の位置を合わす。
ベッドサイズが体の体型に合っていない場合、膝下にクッションをいれベッドの膝折り曲げ頂点と膝の
位置を合わす。体格やベッドの機種によって調整して下さい。
足の裏が安定していると食べやすいと言われています。
麻痺があれば肘当てを置き体が傾かないようにする。
誤嚥しにくくするとは、気管に入りにくくすることです。そのために、人体の構造を利用します。
➀気管と食道の位置関係
気管と食道の位置は胸側に気管があり、背中側に食道がある
②食材が溜まる梨状窩が2つあること
気管の左右に梨状窩がある。
③食道の入り口は普段閉じている
➃気管の入り口に蓋がある
頸部前屈
適応症状
リクライニング位で食べる人、水でむせる人、嚥下前・嚥下後に誤嚥する人、頸部の緊張が高い人
調整方法
後頭部側にクッション等を挿入し、後頭部を上げてあごを引く。
リクライニング角度を付け、重力を利用します。
➀の気管と食道の位置関係から、背中側の食道の入り口へ食物を誘導する。
・頸部を前屈することにより、嚥下筋力が働きやすくなる。
・喉頭蓋谷が開き,食塊がそこに溜まりやすくなる。
・口腔と気管に角度が付き誤嚥しにくくなる。
ことにより、一般的に「枕を高くして、あごを引く」姿勢です。
適応症状
リクライニング位で食べる人、水でむせる人、嚥下前・嚥下後に誤嚥する人、頸部の緊張が高い人
調整方法
後頭部側と頸部側にクッションを挿入し、後頭部を上げて、頸部を突き出す。
リクライニング角度を付け、重力を利用します。
➀気管と食道の位置関係と③食道の入り口は普段閉じている を改善する姿勢。
食道の入り口を広げるために、下あごを突き出す。
適応症状
麻痺などにより食道に食べ物が入りにくい人
調整方法
麻痺や術後など食道に食べ物が入りやすい側をベッド面側にし、体を傾ける。口、食道がベッド面と平行になるように頭部高さを揃える。
リクライニング角度を付け、重力を利用します。
②麻痺がない健側側の入り口を下にして、重力を利用し食物を食道入口部へ誘導する。リクライニング車いすでもよく利用される姿勢です。
適応症状
麻痺などにより食道に食べ物が入りにくい人
調整方法
健側傾斜姿勢より若干クッションを高くし、上を向くように頭部をひねる。
➀気管と食道の位置関係
気管と食道の位置は胸側に気管があり、背中側に食道がある
②食材が溜まる梨状窩が2つあること
気管の左右に梨状窩がある。
気管の左右に食道入口部がある。
③食道の入り口は普段閉じているを利用した姿勢
リクライニング角度を付け、重力を利用します。
麻痺がない健側側の入り口を下にする。
重力を利用し食物を食道入口部へ誘導する。
食道入口部を広げるために、頭を回旋する(右を広げたい場合は左を向く)
適応症状
輪状咽頭筋切除術後、棚橋法術後
調整方法
目の前の食べ物を口をあけて食べに行くイメージで頸部を突出させる。
➀気管と食道の位置関係
気管と食道の位置は胸側に気管があり、背中側に食道がある
③食道の入り口は普段閉じている を改善する姿勢
リクライニング角度を付け、重力を利用します。
➃気管の入り口に蓋がある。
この蓋が何らかの障害で閉じるのが遅かったり、変形したり、上手く閉じなかったりすると
上記の姿勢を調整しても、むせがおこり、誤嚥することもあり、必ず誤嚥しないとは言い切れません。
誤嚥予防介護枕「イージースワロー」を利用すれば、
食事中の頸部前屈の調整ができます。
何らかの理由で飲食物が気管に入ることを誤嚥と言いいます。気管の入り口を声門が閉じて誤嚥を防ぎます。飲食物は、嚥下反射が起こるまで重力の影響を受け下向きに移動し、食べ物が貯まる場所は、仰臥位の場合梨状窩に3ccほど溜まります。梨状窩は声門より高い位置にあり梨状窩からあふれると誤嚥します。横向きになる完全側臥位では、首の側面の咽頭側壁から梨状窩にかけて20㏄ほど溜まる。この場所は、声門より低い位置にあり、誤嚥しません。
嚥下前に食材が溜まる場所は、喉頭蓋谷と梨状窩です。
30度仰臥位では、梨状窩に3ccほど、飲食物が貯まる。
完全側臥位では、咽頭側壁から梨状窩にかて20㏄ほど貯められる。
姿勢を変えるだけで
むせと誤嚥の予防は可能です。
最新の嚥下治療 横になって食べる「完全側臥位法」は、医療現場で実施している病院はまだまだ少なくこれから、広まっていくと思います。しかし、介護や在宅では目の前の方に対して、むせないように誤嚥しないように予防することが今すぐ必要です。
本サイトでは次の情報を提供しています。
1、唾液誤嚥(むせない誤嚥/不顕性誤嚥)ーーー誤嚥性肺炎の多くの原因と言われているます。
1-1.唾液誤嚥の予防方法は、唾液を肺に入れない姿勢にすることです。
回復体位を紹介します。
1-2.就寝時に横向きなっていても、気が付いたら仰向けになり咳き込んでいる。このような経験はよくあると思います。仰向け防止が唾液誤嚥予防につながります。
仰向け防止に有効な背当てクッションを紹介いたします。
1-3.唾液が多くなる時
・経鼻経管や胃瘻で栄養注入している時は唾液の量が増えます。
口から食べられないと判断されたり、絶食中に栄養を胃へ入れている最中に唾液でむせて、ひどく咳き込むと胃に力が入り、胃から内容物が逆流して誤嚥することがあります。これって何か釈然としませんか。でも看護師は経鼻経管中に誤嚥することがよくありますと説明されます。
まず、ここをクリックして回復体位の体験談を読んでください。
2、食事中にむせが多い場合の予防方法
むせて食べれなくなったり、誤嚥の心配がある場合の姿勢を紹介します。
2-1.嚥下反射がしっかりしている場合は頚部前屈が有効です。
頚部前屈をサポートする枕イージースワローを紹介します。
・2-2.口の中のものがなかなか飲み込めなかったり、食事中にのどがゴロゴロ(ガラガラ)鳴ったり、水分でむせたりする場合
横になって食べる完全側臥位が安全に食べられます。
病院に入院してから後悔するより、まずやってみませんか。
完全側臥位法を紹介します。
4.1~3のむせと誤嚥予防をパワーポイントと実習体験でお伝えする「誤嚥性肺炎で入退院を繰り返さないための予防研修」はこちらをクリック
チョットブレイク
重度の嚥下障害者の食事や就寝時の唾液誤嚥予防の姿勢に完全側臥位法という、横になる姿勢が注目を浴びています。完全側臥位法を実践されている福村直毅先生がブログを発信されております。良かったら読んでください。
あなたは食べるときどんな姿勢をしていますか。ほとんどの方は座って食べているのでしょう。ではこれまで横になって(側臥位で)食べたことはありますか。このように講演で聞きますとほとんどの方は食べたことがないとおっしゃいます。はたして皆さんはいかがでしょうか。
今 では椅子の生活が多くなっていますが、中には和室でちゃぶ台に向かって食べているとかこたつに入りながら食べる方もいらっしゃるでしょう。そういった床の 生活の場合、リラックスしてくると簡単に横になることができます。肘を立てて手で頭を支えて横になりながらテレビを見る。そしてお菓子を食べたりジュース を飲んだりする。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。またソファーの生活の方も、ソファーにそのまま転がって、テレビを見ながらポテトチップ スを食べる。そんなカウチポテトと言われるスタイルもあります。風邪をひいてベッドで寝ていて、ちょっと調子が良くなって小腹がすいたから横になって布団 に潜り込んだままでクッキーを食べてみたことはないでしょうか。
横 になって食べるのは次のような場合と考えられます。①リラックスしている。②体調が悪い。気楽に力を抜いて具合が悪くても食べられるとなればとてもいい方 法に見えます。しかしながら日本では「横になって食べると牛になる」などといさめる言葉があり、横になって食べないようにしつけられてきました。だらしな いと思われることもあります。本当にだらしないのでしょうか。
古代ローマ時代、貴族階級の正式な会食であるシンポジオン(シンポジウムの語源でもある)では、参加者はみな横になって食べるしきたりでした。同時代の偉人である、イエス=キ リストは最後の晩餐を弟子たちとともに「横になって」召し上がっていたことがわかっています。当時のことわざで「座って食べる」という言葉があったそうで す。意味は「ちゃんと横になって食べる暇もないくらい忙しい」だそうです。ヨーロッパ、西アジアの文明はもとをたどると横になって食べるのが行儀の良いス タイルだったのです。
安全でリラックスできる食事が横になって食べる方法です。私たちは昔からの由緒正しいこの食事方法を治療に取り入れるべく「完全側臥位法」と名付けて研究しています。次回は完全側臥位法の効果についてお話しします。
福村直毅
嚥下障害と一言で言ってもその原因は多々あります。原因によって対策が決まります。ではどんな原因の時に完全側臥位法が役に立つのでしょうか。
のど(咽頭)は横広の空間です。そのほぼ真ん中に肺の入り口(喉頭)があります。喉頭に食物や唾液などが入ると危険です。どうやったら喉頭に入れないで食べられるか、というパズルを考えます。私はこのパズルを考えるためにコーケンさんにお願いして「咽頭喉頭透明モデル」を作成しました。単純には下図1のように、真上から見ると前後に比べて両サイドに喉頭のスペースが広く空いています。ここをうまく使います。
最もわかりやすいのは飲み込んでも食べ物がのどに残ってしまう方です。残ってしまった食べ物をどこに置けるのか。座位では下図1、2、3から喉頭蓋の外側と咽頭の下側に貯めることができますがあまり広いスペースではありません。仰臥位では咽頭の下側だけに貯められるのでこれは座位よりもスペースが狭くなります。側臥位では咽頭側方に貯めることになりますが、これがもっとも広いスペースを担保します。
咽頭に貯める、という方法がマスターできるといろいろと活用ができます。例えば嚥下運動は反射で生じますので、その反射が遅れてしまう場合。これは感覚入力が一定以上に達しないと嚥下運動が生じないわけですが、その刺激を作り出すために咽頭にたくさん食べ物をため込む方法が使えます。嚥下反射を生み出すための完全側臥位というわけです。
従来から用いられていた一側嚥下も完全側臥位で目的を達することができます。
いろいろと応用が利く完全側臥位です。まずこの3パターンを試してみてはいかがでしょうか。
福村直毅
嚥下障害は、嚥下障害であることに気づくことが難しいことがもっとも大きな問題といえるでしょう。早々に嚥下障害であると気が付けば簡単な方法で対応できます。
早々に現れる嚥下障害の兆しとは何でしょうか。
・急にむせるようになった
・寝ていて咳が出て目が覚めるようになった
・のどに詰まる感じがする
・胸に詰まる感じがする
・痰が絡んだようながらがら声がでる
こういった症状は嚥下機能のどこかに異常があると考えられます。例えば風邪をひいてガラガラ声になるのも、感染により咽頭喉頭の機能が低下して唾液が飲めなかったり痰が切れなかったりするためです。
何が原因かはさておいて、こういった症状があればいったん安全な食事方法に変えるとよいでしょう。
ガラガラ声の場合、本当の声と聴き比べるとわかりやすくなります。本当の声はベッドなどで横になってしっかり咳をして、それから声を出すと聞こえます。これは声を出すときに狭まる場所、声門周辺に唾液や痰が絡んでいる場合にこれらをうまく外す方法です。その声を聞いておいて、座った時に声が変わるか、食事をしたときに、または水を飲んだ時に声が変わるか確認します。もし声が変わるようなら次の3つの方法を考えます。食事中むせるようになった方や詰まるようになった方も同様です。
① 食事姿勢を変える(座位⇒前傾座位⇒完全側臥位)
② 食事内容を変える(常食⇒かまないで飲めるもの⇒ペースト食)
③ 水分のとろみ(水⇒薄いとろみ⇒濃いとろみ)
食事中の声が良くなるように調整してみてください。調整した方法でしっかり食べられれば2-4週間様子を見て改善すれば元の食事が食べられる可能性があります
Firstaidはあくまで「応急手当」です。調整がうまくいかなかったり、様子を見ていてもうまくいかないとき、あるいは心配なときはただちに嚥下障害治療ができる医療機関にご相談ください。
福村直毅
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誤嚥しないで口から食べられる完全側臥位の姿勢から、誤嚥しない理由、やり方を紹介しているページ
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